バッテリー内蔵オシロスコープ
はじめに
オシロスコープといえば、従来は実験室や開発室のベンチに据え置かれて使用される計測器という印象が強かった。しかし、近年では小型化・軽量化とともに、バッテリーを内蔵して可搬性を高めた製品が登場し、フィールドでの使用や電源の確保が難しい環境でも活用されている。バッテリー内蔵型オシロスコープは、現場作業や教育用途、研究開発のさまざまなシーンで非常に重宝されている。本記事では、その特徴と活用メリット、選定時のポイントについて解説する。
バッテリー内蔵オシロスコープの特長
最大の特長は、AC電源に依存せずに動作できることである。多くのモデルはリチウムイオンバッテリーを内蔵しており、充電によって数時間の連続使用が可能となっている。現場に持ち出してそのまま使用できることから、保守点検業務や屋外設備の調査、車載機器の開発などにおいて非常に有用である。
また、バッテリー駆動によって、ACアースと切り離されたフローティング状態で測定できることも大きな利点である。これにより、グランドループによるノイズ混入や測定エラーのリスクを軽減できる。特にインバータ回路や高電圧のパワーエレクトロニクス分野では、安全かつ高精度な測定において有利となる。
携帯性と操作性の両立
バッテリー内蔵型の多くは、タブレット型やポータブル型と呼ばれる形状を採用しており、片手で持てるほどの軽量モデルも存在する。OWON製のタブレット型オシロスコープシリーズでは、10インチクラスのカラー液晶ディスプレイとタッチ操作に対応したユーザーインターフェースを備えており、屋外でも見やすく、指先で直感的に操作が可能となっている。
さらに、専用の収納ケースやハンドル、スタンドなども装備されており、持ち運びと作業性の両立が図られている。こうした設計は、機動力を求めるサービスエンジニアや研究者にとって大きな魅力となっている。
測定性能と高分解能の両立
携帯型であっても、性能が妥協されているわけではない。近年のモデルは高分解能ADCを搭載しており、12ビットあるいはそれ以上の高精度測定が可能である。OWONのMTSシリーズやTOシリーズなどでは、1GSa/sのサンプリングレートや50Mポイントを超えるメモリ長を持ち、ベンチトップ型と同等の波形解析能力を実現している。
また、バッテリー内蔵型は高感度測定にも向いており、微小信号の観測やノイズの影響を抑えたい場合にも活用できる。フィールドでのEMI対策や、電源系統の微小リップル検出などにも対応可能である。
多機能統合による活用範囲の拡大
バッテリー内蔵型オシロスコープの多くは、複数の測定機能を統合した「オールインワン」仕様となっている。例えばロジックアナライザ、ファンクションジェネレータ、マルチメータ、スペクトラム解析などが統合されており、1台で複数の測定を同時に行うことができる。
このような統合設計により、作業現場での機材削減や設置スペースの削減が可能となり、狭い作業現場や限られた設備環境でも効率的な測定が行える。
活用シーンの広がり
バッテリー内蔵オシロスコープは以下のようなシーンで特に威力を発揮する。
工場設備のメンテナンス
電気自動車や車載電子回路の実装評価
太陽光発電設備やバッテリー回路の現地測定
災害現場や屋外インフラ設備の信号確認
学校や大学の実験実習での活用
これらの現場では、電源の確保が難しい場合や、作業時間の制約がある場合が多く、迅速かつ柔軟に動ける機材が求められている。バッテリー駆動で動作するオシロスコープは、そうした現場のニーズに対応する理想的なソリューションとなる。
選定時のポイント
バッテリー内蔵オシロスコープを選ぶ際には、以下の点を確認するとよい。
連続動作時間(バッテリー寿命)
画面サイズと視認性
対応帯域と分解能
機能統合の有無(LA、FG、DMMなど)
データ保存やPC接続機能の有無
重量と寸法
充電方法とバッテリー交換の可否
実際の用途に応じて、これらのバランスを考慮しながら選定することが重要である。特に屋外作業が長時間にわたる場合や、バッテリーの持ちに不安がある場合には、交換可能なバッテリーパックやモバイル充電対応モデルを検討するとよい。
まとめ
バッテリー内蔵オシロスコープは、可搬性と計測性能を兼ね備えた新世代の測定器である。フィールド対応力に優れ、持ち運びが簡単でありながら、精度や解析機能にも妥協がない。OWONをはじめとしたメーカーが提供する高性能なタブレット型モデルは、教育用途からプロフェッショナルな現場作業まで幅広く活用されている。
今後ますます現場作業やフィールド計測のニーズが高まる中で、バッテリー内蔵オシロスコープの需要は拡大していくと予想される。用途に応じた最適な一台を選び、効果的に活用することで、よりスピーディで信頼性の高い測定が可能になる。
製品情報
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