オシロスコープとスペクトラムアナライザの違い
目的の違い
オシロスコープとスペクトラムアナライザは、いずれも電気信号を可視化するための計測器だが、根本的な目的が異なる。オシロスコープは主に時間軸で波形を表示するのに対し、スペクトラムアナライザは周波数軸で信号の成分を分析する。たとえば、デジタル信号の立ち上がり時間やオーバーシュートを観察したい場合はオシロスコープが適しており、逆に信号に含まれる不要なノイズ成分や高調波を測定したい場合はスペクトラムアナライザが有効である。
表示方式の違い
オシロスコープは横軸が時間、縦軸が電圧の表示であり、短時間の波形を瞬間的に捉えることに優れている。一方、スペクトラムアナライザは横軸が周波数、縦軸が振幅で構成されており、任意の周波数帯域内でどの周波数成分がどの程度存在しているかを表示する。周波数解析に特化しているため、電波の干渉やEMIノイズ、RF信号の品質評価などに頻繁に用いられる。
解析手法の違い
オシロスコープで周波数成分を分析するには、通常FFT機能を用いる。これは時間領域の信号を周波数領域へ変換するアルゴリズムであり、比較的簡易的な周波数解析を可能にする。ただし、FFTはサンプル数や窓関数の設定により分解能や精度が左右されやすい。一方、スペクトラムアナライザは専用のハードウェアとスイープ方式を用いて高精度な周波数解析を行うため、ダイナミックレンジが広くノイズフロアも低い。
リアルタイム性と測定レンジの違い
オシロスコープはリアルタイムで信号の瞬間的な変化を捉えるのに長けている。突発的なグリッチや過渡現象の観測、トリガ条件による精密な制御が可能であり、短時間の信号変動に敏感である。一方、スペクトラムアナライザは広い帯域をスイープする方式で測定するため、信号の変化が速いと取りこぼす可能性がある。ただし、近年ではリアルタイムスペクトラムアナライザも登場しており、変化の速い信号にも対応できるモデルがある。
測定対象の違い
オシロスコープは低周波から数GHz帯までのデジタル・アナログ波形、パルス信号、通信プロトコルなどの波形観測に適している。一方で、スペクトラムアナライザはRF信号、無線通信、EMCノイズ、高調波測定など、周波数ドメインでの精密な成分分析に優れている。たとえば、Wi-FiやBluetoothのような高周波信号のスペクトル分布を確認したい場合、スペクトラムアナライザが不可欠である。
計測精度と分解能の違い
スペクトラムアナライザは一般に非常に高い分解能帯域幅(RBW)を持ち、微細な周波数差異を区別できる。一方、オシロスコープのFFT機能では、使用する時間窓の長さやメモリ深度により分解能が制限される。これにより、近接する周波数成分が分離できないことがある。また、スペクトラムアナライザは振幅の精度も高く、-100 dBm以下の微小信号も正確に測定できる。
使い分けの考え方
設計や評価の現場では、オシロスコープとスペクトラムアナライザを適材適所で使い分けることが重要である。時間軸上での波形確認や過渡現象の解析はオシロスコープに任せ、周波数成分の測定やノイズ源の特定などにはスペクトラムアナライザを使う。近年は両者の機能を併せ持つハイブリッドな計測器も登場しており、たとえばSIGLENTのSVAシリーズのように、オシロスコープ的な画面構成でスペクトル解析もできる機種は非常に便利である。
まとめ
オシロスコープとスペクトラムアナライザは、それぞれ得意分野が異なるが、どちらも電気信号の解析には欠かせない存在である。FFT機能付きのオシロスコープは周波数分析の入門として有効であり、本格的なEMI対策やRF測定にはスペクトラムアナライザが必須となる。目的や予算に応じて適切な機器を選択することが、効率的かつ的確な信号解析への第一歩となる。
製品情報
- 【新製品ニュース】12ビット高分解能モデル続々登場!OWONの多機能デジタル・オシロスコープ3シリーズを新たにラインアップ
- 即日出荷で確実に納品!3月末まで!
- 【実機展示開始】実機展示が東洋計測器ランド本店でスタート
- 【キャンペーン】OWON社スペアナ購入で「EMI対策用近傍界プローブ、RFケーブル」をもれなくプレゼント
- 国際 カーエレクトロニクス技術展2024 に出展
- OWON SDS1000シリーズオシロスコープと定番超入門書の特別コラボレーション
- 【教育現場必見】1台4役!万能計測器がすごい | OWON FDS1102
- OWON、東京ハムフェアで最新スペアナ技術を披露!好評を博す
- ハムフェア2023に出展決定!実機体験でお得なクーポンも進呈!
- OWONとPINTECHが戦略提携協議を締結し、計測機器市場で新たな展開を目指す