AC/DCカップリングとは?
AC/DCカップリングとは、オシロスコープやマルチメータなどの電子測定機器において、入力信号をどのように内部回路へ伝達するかを切り替える設定のことです。具体的には、「ACカップリング」と「DCカップリング」の2つのモードがあり、信号の成分(直流成分または交流成分)に応じた測定を可能にします。
DCカップリング(Direct Coupling)
信号の直流成分と交流成分の両方を含めて測定します。
たとえば、DCオフセットを持つ信号や、直流電圧そのものを正確に観測する際に使用します。
初期設定では多くの機器がDCカップリングになっており、信号の全体像(平均値、振幅、オフセットなど)を正しく把握できます。
ACカップリング(AC Coupling)
入力回路に高域通過フィルタ(ハイパスフィルタ)を挿入し、直流成分をカットして交流成分だけを測定します。
たとえば、数ミリボルトのリップル成分を数ボルトのDC信号上に重畳している場合など、DCオフセットを無視して小さな変化だけを詳細に観察したいときに有効です。
一般的には、数Hz〜10Hz以下の成分が除去されるため、低周波信号を扱う際には注意が必要です。
OWON製オシロスコープにおけるカップリング切り替え
OWONの各シリーズ(XDS、ADS800A、HDS200など)では、チャンネルごとに「AC」「DC」「GND(接地)」を選択できるカップリング設定が用意されています。たとえば:
■OWON XDSシリーズ:各チャンネルでソフトキー操作によりAC/DCを簡単に切り替え可能。微小な交流成分の抽出に最適。
■OWON ADS800Aシリーズ:12ビット高分解能での微細波形観測時、ACカップリングがノイズ解析や電源リップル測定に便利。
■OWON HDS200シリーズ:現場作業でもワンタッチでAC/DC切り替えが可能。直流成分の影響を排除して、信号の変化だけに集中できます。
まとめ:使い分けのポイント
用途 | 推奨カップリング |
---|---|
信号の全体像を確認(オフセット含む) | DCカップリング |
微小な交流変動を拡大して見たい | ACカップリング |
直流電圧の測定 | DCカップリング |
適切にAC/DCカップリングを使い分けることで、信号の本質を見逃さず、正確な測定やトラブル解析が可能になります。
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