電流プローブとは|電流波形を“見える化”する必須ツール
電流プローブ(Current Probe)とは、電流の流れを非接触または低インピーダンスで検出し、オシロスコープで波形として表示するための専用プローブです。オシロスコープ単体では電圧信号の観測が基本となりますが、電流プローブを併用することで、回路内の電流波形をリアルタイムに可視化できるようになります。
電源回路、モータードライブ、インバータ、バッテリー充放電の測定など、多くの分野で活用されています。
主な測定用途
DCモーターやACモーターの駆動電流測定
スイッチング電源やDC-DCコンバータの電流波形解析
バッテリー回路の充電・放電電流測定
電力測定における電圧・電流の同時測定
ヒューズ、リレー、コイルなどの突入電流観測
電流プローブの種類
クランプ型電流プローブ:回路を切断せず、導体にクランプするだけで電流測定が可能。ホール素子や電流トランスを用いて、直流および交流電流に対応するモデルがあり、実用性が高く、安全性にも優れます。
シャント型プローブ:電流を電圧に変換するシャント抵抗を用いて測定するタイプ。高精度だが、測定回路に挿入する必要があり、設置に注意が必要です。
光絶縁型電流プローブ:高電圧や高ノイズ環境に適した、安全性の高いプローブ。回路と測定器を光で絶縁し、高いコモンモード除去性能を持ちます。
特長と利点
非接触測定が可能(クランプ型):絶縁性が保たれたまま測定でき、安全性が高い
直流・交流の両方に対応するモデルが多数:DC電源、PWM波形、リップル電流など幅広く対応
高帯域モデルでスイッチング波形も観測可能:帯域幅数MHz~数十MHzのモデルがあり、スイッチング周波数に対応
オシロスコープと連動した測定が可能:電圧・電流を同時に観測し、**電力解析(P=VI)**やフェーズ差の評価にも有効
使用時の注意点
定格電流を確認すること:プローブの仕様を超える電流は誤測定や機器破損の原因となります
帯域幅と精度のバランスを確認:高精度が求められる測定には低ノイズモデル、高速測定には高帯域モデルを選択
測定対象の導体を1本に限定する:複数の導体を一緒にクランプすると、相殺されて誤差が出ます
ゼロ点補正を行う:測定前にはオフセット調整(ゼロ調整)を行い、正確な値を取得しましょう
電流プローブ選定のポイント
項目 |
選定の目安例 |
測定電流範囲 |
数mA〜100A以上まで用途に応じて選択 |
帯域幅 |
数kHz~数十MHz、スイッチング用途では10MHz以上推奨 |
測定方式 |
クランプ型(非接触)、シャント型(挿入型) |
絶縁性 |
高電圧・安全性が必要な場合は絶縁型推奨 |
出力方式 |
電圧出力(1mV/Aなど)、BNC出力が主流 |
まとめ
電流プローブは、電流の“見える化”を実現する重要な計測ツールです。回路の状態や負荷の変化、スイッチング動作を詳細に観察することで、開発・評価・保守作業の精度が飛躍的に向上します。
用途や測定対象に応じて、最適なタイプ・帯域・定格電流のプローブを選び、安全で正確な電流測定を実現しましょう。
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