SCPIコマンドとは
SCPIコマンドとは、Standard Commands for Programmable Instrumentsの略で、電子計測機器をコンピュータから制御するための共通言語として策定されたコマンド体系のことです。シリアル通信、USB、LAN、GPIBなどのインターフェースを通じて、測定機器に対して動作指示やデータ取得などの命令を送信できます。1990年にIEEE 488.2規格に基づいて標準化され、現在では多くのオシロスコープ、マルチメータ、信号発生器、スペクトラムアナライザなどがSCPIに対応しています。
SCPIの主な用途
SCPIコマンドは、開発・検査・評価の自動化に用いられます。プログラムから測定器を制御し、設定変更や測定値の取得、ファイルの保存などを一括で実行できます。これにより人手による操作を減らし、作業の効率化と再現性の向上を実現します。研究所や製造ライン、品質保証部門などで広く利用されています。
SCPIコマンドの書式例
SCPIコマンドは、階層構造を持つテキストベースのコマンドで構成されます。大文字・小文字は区別されず、必要に応じて短縮形も使用可能です。
■ :MEASure:VOLTage:DC?
直流電圧を測定し、値を取得するコマンド
■ :CHANnel1:SCALe 0.5
チャンネル1の縦軸スケールを0.5V/divに設定するコマンド
■ :TRIGger:LEVel 1.0
トリガーレベルを1.0Vに設定するコマンド
■ :RUN または :STOP
波形観測の開始や停止を指示するコマンド
SCPIコマンドのメリット
■ 機器操作を自動化でき、繰り返し測定が簡単になります
■ 多くのメーカーで共通の構文が使えるため、機器の切替にも柔軟に対応できます
■ テキストベースのため、プログラムから制御しやすく、デバッグも容易です
■ PythonやLabVIEW、C言語などさまざまな言語から制御可能です
注意点
SCPIは共通規格ではありますが、全ての機器が同じコマンドセットを持つわけではありません。メーカーや機種によって対応コマンドの範囲や機能が異なるため、使用する機器のSCPIリファレンスマニュアルを確認することが重要です。また、通信環境(LAN、USB、GPIBなど)によって接続方法や初期設定が異なる場合があります。
まとめ
SCPIコマンドは、測定器の制御・データ取得・設定変更をプログラムから実行できる便利な標準化された通信言語です。電子計測の自動化や品質管理において欠かせない要素の一つであり、正しく活用することで測定業務の効率と精度を大きく向上させることができます。
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