プローブ補正とは
プローブ補正とは、オシロスコープに接続するプローブの周波数特性を調整し、測定波形が正確に表示されるようにする作業のことです。主にパッシブプローブを使用する場合に必要な調整であり、補正を行わないと波形の形状が歪んで表示されたり、誤った測定結果につながるおそれがあります。
補正の目的
プローブとオシロスコープの間には入力インピーダンスや容量の違いがあります。そのまま使用すると、信号の立ち上がりや振幅が正しく再現されず、方形波が丸くなったり尖って表示されることがあります。プローブ補正は、こうした波形の歪みを防ぎ、測定の正確性を保つために行います。
補正の手順
■ プローブをオシロスコープの入力チャンネルに接続します
■ プローブ先端を本体前面の補正信号出力端子(通常は1kHz、2Vp-pの方形波)に接続します
■ オシロスコープに表示された方形波の立ち上がり部分を観察します
■ プローブのコネクタ付近にある小さな補正ネジ(トリマー)を調整ドライバーで回し、波形が正しい矩形になるように調整します
■ 補正後、全チャンネルで同様の作業を行います
補正波形の見え方
補正が適切でない場合、波形は次のように表示されます
■ アンダー補正:波形の立ち上がりが丸くなる
■ オーバー補正:波形の角が尖ったり、オーバーシュートが出る
■ 正常な補正:上下が平らで、垂直な立ち上がりを持つ矩形波
プローブ補正のメリット
■ 測定誤差を減らし、信号の正確な観測が可能になります
■ オシロスコープの性能を最大限に引き出せます
■ ノイズや過渡応答の確認時に、波形の再現性が向上します
■ 複数チャンネル間の比較がより正確になります
注意点
補正作業は測定のたびに行う必要はありませんが、プローブを別のチャンネルや別のオシロスコープに接続した場合は再調整することが推奨されます。また、補正ネジは繊細な構造のため、無理な力を加えず丁寧に調整することが重要です。
まとめ
プローブ補正は、オシロスコープによる正確な測定を行うための基本的かつ重要な作業です。特に高周波信号や立ち上がりの速い波形を扱う際には、プローブの特性が測定結果に大きく影響します。日常的な点検項目として、正しい補正の習慣を身につけることが大切です。
もっと用語集
-
オシロスコープの基本操作 第1回「接続と初期設定」
-
位相測定とは
-
波形演算機能とは
-
アラーム設定とは
-
スロープトリガーとは
-
パルストリガーとは
-
シリアルバス解析とは
-
プロトコルデコード(I2C, SPI, UARTなど)とは
-
オシロスコープの基本操作 第10回「オシロスコープの活用事例と応用テクニック」
-
インバータ測定とは
-
波形ズームとは
-
オシロスコープの基本操作 第2回「トリガー設定」
-
オシロスコープの基本操作 第3回「スケーリングと測定機能」
-
オシロスコープの基本操作 第4回「波形の保存とデータ活用」
-
オシロスコープの基本操作 第5回「オシロスコープのメンテナンスとトラブル対策」
-
オシロスコープの基本操作 第6回「プローブの種類と選び方」
-
オシロスコープの基本操作 第7回「プローブの正しい使い方と接続方法」
-
オシロスコープの基本操作 第8回「オシロスコープで測定できる代表的な波形と活用例」
-
オシロスコープの基本操作 第9回「よくある測定ミスとその対策」
-
電源波形測定とは
-
トリガー設定とは
-
オシロスコープのLAN接続とは
-
LAN接続とは
-
HDMI出力とは
-
RS-232とは
-
オシロスコープ 校正機能とは
-
校正証明書とは
-
波形ファイル形式(.csv, .bmpなど)とは
-
SCPIコマンドとは
-
周波数分解能とは
-
プローブ補正とは
-
FFT解析とは
-
ゼロ調整とは
-
マーカー機能とは
-
測定シーン別オシロスコープ活用術 第8回「複数チャネルの同時測定と相関分析」
-
データエクスポートとは
-
リモート制御とは
-
自動スケーリングとは
-
スクロール機能とは
-
スクリーンショット保存とは
-
デモモードとは
-
失敗しないオシロスコープ操作術 第7回「保存・エクスポート・PC転送トラブルの対処法」
-
オシロスコープ入門講座 第7回「波形の種類と読み取り方(矩形波/三角波など)」
-
オシロスコープの基本操作 第11回「オシロスコープ購入時のチェックポイントとおすすめ仕様」
-
オシロスコープ入門講座 第9回「簡単なトラブルシューティング(波形が出ないとき等)」
-
オシロスコープ入門講座 第10回「よくある使い方の事例(電源・通信・オーディオ)」
-
失敗しないオシロスコープ操作術 第1回「波形が表示されないときのチェックリスト」
-
失敗しないオシロスコープ操作術 第2回「プローブの誤接続で起こる問題と対処法」
-
失敗しないオシロスコープ操作術 第3回「トリガーが安定しない原因と解決策」
-
失敗しないオシロスコープ操作術 第4回「ノイズだらけの波形を改善する方法」
-
オシロスコープ入門講座 第5回「信号の入力方法とトリガーの考え方」
-
失敗しないオシロスコープ操作術 第6回「測定値が信用できないときに見直すポイント」
-
オシロスコープ入門講座 第6回「時間軸・電圧軸のスケール調整と見方」
-
測定シーン別オシロスコープ活用術 第1回「電源回路の基本測定(リップル/過渡応答)」
-
測定シーン別オシロスコープ活用術 第2回「センサー出力の確認(温度/加速度)」
-
測定シーン別オシロスコープ活用術 第3回「PWM信号のデューティ比確認」
-
測定シーン別オシロスコープ活用術 第4回「アナログ vs デジタル信号の測定方法の違い」
-
測定シーン別オシロスコープ活用術 第5回「マイコンI/Oの応答チェック」
-
測定シーン別オシロスコープ活用術 第6回「オーディオ波形の確認とひずみの可視化」
-
測定シーン別オシロスコープ活用術 第7回「FFTを使ったノイズ源の分析」
-
測定カーソルとは
-
失敗しないオシロスコープ操作術 第5回「信号が途中で切れている?帯域幅とメモリの落とし穴」
-
信号発生器 入門ガイド 第5回「オシロスコープとの連携測定」
-
プローブの基礎と活用術 第1回「プローブの種類と役割」
-
プローブの基礎と活用術 第2回「正しい接続方法と注意点」
-
プローブの基礎と活用術 第3回「減衰比と入力インピーダンスの関係」
-
プローブの基礎と活用術 第4回「プローブ補正のやり方」
-
プローブの基礎と活用術 第5回「測定精度を保つためのメンテナンスと保管」
-
プローブの基礎と活用術 第6回「プローブ故障のサインと交換時期」
-
信号発生器 入門ガイド 第1回「信号発生器の基本と種類」
-
信号発生器 入門ガイド 第2回「正弦波・方形波・パルス波などの用途と設定」
-
オシロスコープ入門講座 第8回「基本的な測定項目(周期/周波数/振幅など)」
-
信号発生器 入門ガイド 第4回「任意波形の作成と活用事例」
-
オシロスコープ入門講座 第4回「プローブの基礎知識と使い方」
-
FFTと周波数ドメイン解析 第1回「時間ドメイン vs 周波数ドメインとは」
-
FFTと周波数ドメイン解析 第2回「FFT表示の基本操作とスケーリング」
-
FFTと周波数ドメイン解析 第3回「ノイズ解析への応用」
-
FFTと周波数ドメイン解析 第4回「オーディオ信号や電源リップルの解析」
-
FFTと周波数ドメイン解析 第5回「帯域幅と分解能の関係」
-
オシロスコープ入門講座 第1回「オシロスコープとは何か?基本概念と用途」
-
オシロスコープ入門講座 第2回「アナログ vs デジタルオシロスコープ」
-
オシロスコープ入門講座 第3回「基本構造と各部名称(ディスプレイ/つまみなど)」
-
信号発生器 入門ガイド 第3回「周波数・振幅・オフセットの調整方法」