波形演算機能とは
波形演算機能とは、オシロスコープに入力された複数の信号に対して、加算・減算・乗算・除算などの数式処理を行い、新たな波形として表示・解析する機能です。物理量の算出や信号間の関係分析に役立ち、実験や評価の効率を大きく向上させます。
主な演算内容
■ 加算(A + B):2つの波形を合成して総和の波形を表示
■ 減算(A − B):信号間の差異を明示し、ノイズや変化点を把握
■ 乗算(A × B):交流電力や変調波形の分析に活用される
■ 除算(A ÷ B):ゲイン解析や信号比の検出に使用
■ FFT演算:周波数スペクトルへの変換(専用モードとして分離されていることも多い)
■ 積分/微分:電流から電荷、電圧から速度などの物理変換
■ ユーザー定義式(カスタム式):機種によっては任意の関数入力が可能
使用シーン
■ デジタル信号の差分検出やエッジ解析
■ 電流プローブと電圧プローブを用いた瞬時電力の計算(P = V × I)
■ 差動信号の合成(例:A − Bで差動表示)
■ センサ出力の単位変換やフィルタ処理
操作方法の例
■ メニューから「演算」「MATH」「演算波形」などの機能を選択
■ 対象チャンネルと演算内容を指定
■ 結果波形が独立した表示として追加される(MATH CHなど)
■ 必要に応じて垂直スケールやトリガー対象を調整
メリット
■ ハードウェア的な追加回路を用意せずに、複雑な信号解析が可能
■ 実験中の即時演算により、リアルタイム評価を実現
■ 測定精度を高め、複合的な物理量の解析が可能となる
注意点
■ 入力波形の同期が取れていない場合、演算結果が正確にならない
■ 信号がクリッピングしていると、演算結果に誤差が生じる
■ 複雑な演算では演算処理に時間がかかる場合がある
まとめ
波形演算機能は、オシロスコープを単なる表示装置から高度な解析装置へと変える重要な機能です。信号の合成や差分、電力解析など、多くの応用に対応可能であり、測定効率と解析精度を飛躍的に高めるために活用が推奨されます。
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