ノイズ除去フィルタとアクティブプローブの相性
アクティブプローブの基本特性
アクティブプローブとは、プローブ内部にアンプ回路を内蔵し、高い入力インピーダンスと低い負荷容量を両立した測定器用アクセサリである。一般的なパッシブプローブと比較して周波数応答が広く、信号源に対して負荷をかけにくいため、微小信号や高速信号の測定に適している。また、微弱な差動信号や、ハイインピーダンス回路の測定においても、波形の歪みを抑えて高精度な観測が可能である。
ノイズ除去フィルタとの組み合わせが重要な理由
アクティブプローブは高帯域性能を有するがゆえに、測定対象外のノイズも拾いやすいという性質がある。特に電源ラインや周囲の電磁環境からの高周波ノイズが観測波形に重畳するケースでは、正確な波形確認が困難になる。こうした場合、オシロスコープ側のローパスフィルタやバンドパスフィルタ機能を組み合わせて使用することで、目的とする信号のみを可視化しやすくなる。
ローパスフィルタとの相性:微小信号の明瞭化
微小なアナログ信号の測定では、周囲からの高周波ノイズが視認性を下げる要因となる。アクティブプローブは微小信号を忠実に拾えるため、ローパスフィルタを適用することで高周波成分をカットし、本来の波形のみを表示できるようになる。たとえば、数mVクラスのセンサ信号測定では、アクティブプローブ+10kHz以下のローパスフィルタの組み合わせが非常に効果的である。
バンドパスフィルタとの併用:特定周波数の抽出
スイッチングノイズやクロック成分など、特定の周波数帯だけを観測したい場合、アクティブプローブとバンドパスフィルタの併用が推奨される。例えば、SPI通信のクロック波形(1MHz)を観測しつつ、他の不要な成分を除去したいとき、0.9~1.1MHz程度のバンドパスフィルタを設定すれば、観測がより明瞭になる。
アクティブ差動プローブ+ノイズフィルタ:CMノイズの除去に効果
アクティブ差動プローブは、共通モードノイズを効果的に除去し、差動信号の測定に特化している。これに加えて、共通モードノイズの周波数が特定されている場合には、オシロスコープ側にバンドストップフィルタを設定してその周波数帯を遮断することで、さらにクリアな観測が可能になる。例えば、インバータ回路や車載信号に重畳するスイッチングノイズを抑えるのに有効である。
フィルタによる波形の歪みに注意
一方で、ノイズ除去フィルタを強くかけすぎると、アクティブプローブ本来の高帯域性能が活かされなくなるケースもある。ローパスフィルタは高周波成分を除去するため、立ち上がり時間や高調波成分が削られ、波形が滑らかになりすぎることがある。特に高速デジタル信号の観測時は、フィルタ設定を慎重に行う必要がある。
アクティブプローブを使った測定対象別のフィルタ活用例
・微小センサ出力の観測
⇒アクティブプローブ+ローパスフィルタ(数kHz)
・高速クロック信号のノイズ抽出
⇒アクティブプローブ+ハイパスまたはBPF(MHz以上)
・車載通信(CAN・FlexRay・SENT)信号の雑音除去
⇒アクティブ差動プローブ+ノイズバンドストップ
・高インピーダンス回路のアナログ波形測定
⇒アクティブプローブ+平均化+ローパス
プロービングとグラウンド取りもノイズ除去には重要
フィルタ機能だけでなく、プロービング手法もノイズ除去に密接に関係する。アクティブプローブのグラウンドはなるべく短く、対象信号近くに直接落とすのが基本である。加えて、プローブのケーブル配置や電源線とのクロストークも最小限に抑える必要がある。これらを守らないと、せっかくのフィルタ設定も効果が薄れてしまう。
まとめ
アクティブプローブは、その高性能ゆえにノイズの影響も受けやすいが、オシロスコープのフィルタ機能と組み合わせることで、測定精度を飛躍的に高めることができる。ローパスで不要な高周波を除き、バンドパスで目的の成分に集中し、バンドストップで干渉波を除去する。アクティブプローブとフィルタは互いに補完し合う関係にあり、ノイズに埋もれた信号をクリアに再現するための最強の組み合わせである。
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