■時間軸(Time/div)とは?
オシロスコープの画面には、観測している波形が横方向に展開されています。この横軸が「時間軸(Time axis)」であり、**Time/div(タイム・パー・ディビジョン)**は「1目盛あたりの時間幅」を意味します。
つまり、画面上の1区間(1ディビジョン)に表示される時間の長さを設定することで、波形の全体的なスケールや細部の拡大・縮小を調整できます。
■Time/divの単位と設定例
Time/divの単位は、**秒(s)・ミリ秒(ms)・マイクロ秒(µs)・ナノ秒(ns)**などが用いられます。例えば、Time/div=1msの場合、画面の1目盛(ディビジョン)あたり1ミリ秒、全10目盛の表示で10ms分の信号が観測されます。
例:Time/div = 500µs → 画面全体で5ms分の波形が表示
例:Time/div = 1ns → 画面全体で10ns分の波形が表示
■時間軸の設定の目的
時間軸の設定は、以下のような目的に応じて使い分けます。
・波形全体の動きを見たいとき → 長めのTime/divに設定(例:1ms/div)
・波形の細かい部分やノイズを見たいとき → 短めのTime/divに設定(例:100ns/div)
時間軸を広げる(Time/divを大きくする)と、全体の流れを確認できるようになります。逆に、Time/divを縮めると、瞬間的な変化や微細なノイズも見やすくなります。
■Time/divと水平軸の関係
オシロスコープのディスプレイは、多くのモデルで**10等分された水平軸(10ディビジョン)**になっています。したがって、Time/divの設定値 ×10 が、画面全体で表示される時間幅になります。
たとえば、
Time/div = 100µs → 画面全体で1ms
Time/div = 2ms → 画面全体で20ms
このように計算できます。
■時間軸とサンプリングレートの関係
時間軸の設定は、**サンプリングレート(1秒間に取り込むデータ点の数)**にも影響します。Time/divが短いほど、オシロスコープは高いサンプリング速度で波形を取得する必要があります。
・短いTime/div(高解像度で微細な波形を表示)
・長いTime/div(長時間の波形全体を表示)
なお、OWONのデジタル・オシロスコープでは、メモリ長の自動調整により、最適なサンプリング条件で信号が取得されるため、初心者でも安心して使えます。
■時間軸を活用したトラブル解析の例
・電源ON後の挙動を観察 → Time/div = 5ms など長めに設定
・突発的なスパイクノイズを観察 → Time/div = 100ns など短めに設定
・PWM信号のデューティ比を確認 → Time/div = 10µs 付近を調整しながら
・オーディオ信号やセンサ信号の周期観察 → Time/div = 1ms~10ms
このように、Time/divの設定を使い分けることで、必要な情報を見逃さずに捉えることが可能になります。
■OWON製オシロスコープの特徴
OWONのオシロスコープでは、Time/divの調整がノブやタッチパネルで簡単に操作でき、リアルタイムで波形が変化する様子を見ながら、最適な時間軸にすぐ設定できます。また、**ズーム機能(時間軸拡大)**を併用することで、波形の一部を拡大表示して詳細に解析することも可能です。
■まとめ
Time/divは、オシロスコープの基本中の基本といえる重要な設定項目です。波形を止めて見るにはトリガが必要ですが、波形の「見え方」を決めるのはTime/divです。
用途や観測対象に応じて、時間軸を適切に設定することで、精度の高い測定と効率的なトラブル解析が可能になります。
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