サンプリングレートとは?
オシロスコープにおけるサンプリングレート(sampling rate)とは、1秒間に波形をどれだけの点で記録するかを示す指標です。単位はSa/s(サンプル毎秒:Samples per second)で表され、たとえば「1GSa/s」であれば、1秒間に10億回のサンプリングを行っていることになります。
サンプリングレートが高いほど、波形の細かな変化をより忠実に再現でき、正確な波形観測が可能になります。
■アナログ信号のデジタル化
オシロスコープは、アナログ信号をA/Dコンバータ(アナログ-デジタル変換器)でデジタル信号に変換して画面に表示します。このとき、アナログ信号を一定間隔で点として記録する処理がサンプリングであり、その頻度がサンプリングレートです。
■高いサンプリングレートのメリット
サンプリングレートが高いと、以下のような利点があります。
・急峻な立ち上がりの波形を再現できる
・高周波成分を正しく捉えられる
・過渡的な異常(グリッチやノイズ)を見逃しにくい
・FFT解析の精度が向上する
特にデジタル信号や高速通信信号を扱う場面では、十分なサンプリングレートが不可欠です。
■ナイキスト理論と必要なサンプリングレート
信号を正しくデジタル化するためには、対象とする信号の周波数の2倍以上のサンプリングレートが必要です。これをナイキスト定理と呼びます。
例えば、10MHzの信号を観測する場合、最低でも20MSa/sのサンプリングが必要となりますが、現実的には5〜10倍程度の余裕を持たせるのが一般的です。
■サンプリングレートと時間軸の関係
オシロスコープの時間軸(Time/div)を広げると、1画面に表示される時間幅が大きくなり、それに伴ってサンプリングポイントの密度が減少します。この場合、一部のオシロスコープではサンプリングレートが自動的に下がることもあるため注意が必要です。
サンプリングレートが不足すると、波形が粗くなったり、正しい波形が表示されなかったりすることがあります。
■メモリ長との関係
サンプリングレートは、内部メモリと密接な関係があります。たとえば、50Mポイントのメモリを持つオシロスコープで1GSa/sのサンプリングを行うと、約50ミリ秒分の波形を記録できることになります。
長時間の波形を詳細に記録したい場合には、高サンプリングレート × 大容量メモリの組み合わせが重要です。
■OWON製品におけるサンプリング性能の特徴
OWONのオシロスコープ(例:ADSシリーズなど)は、ローエンドからミドルレンジまで最高1〜2.5GSa/s程度のサンプリング性能を備えています。また、12ビットADCを搭載したモデルでは、高分解能で滑らかな波形表示が可能です。
製品によっては、シングルチャンネル動作時に最大サンプリング性能を発揮する設計になっており、複数チャンネル同時使用時には分配される点にも注意が必要です。
■まとめ:サンプリングレートは波形観測の解像度
サンプリングレートは、オシロスコープにおける「時間的な解像度」を決める重要なパラメータです。
対象とする信号の周波数帯に応じて適切な設定を行い、見逃しのない波形観測やトラブル解析を行うために、サンプリングレートの理解と設定は不可欠です。
OWON製品では、高いコストパフォーマンスで実用的なサンプリング性能を備えており、電子回路の開発、教育現場、フィールドメンテナンスなど幅広い用途に対応しています。
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