オシロスコープ FFTとは?
オシロスコープにおけるFFT(Fast Fourier Transform)とは、観測された波形(時間領域)を周波数成分(周波数領域)に変換して表示する機能です。
これにより、信号がどの周波数成分を含んでいるか、ノイズや不要な成分がどこにあるかなどを視覚的に確認することができます。
■時間軸と周波数軸の違い
通常、オシロスコープは時間軸(Time Domain)で波形を表示します。これは、信号が時間とともにどう変化するかを示しています。一方でFFTは、同じ波形を周波数軸(Frequency Domain)で表示します。つまり、どんな周波数成分をどれだけ含んでいるかを見るための機能です。
■FFTのしくみ
FFTは、数学的にはフーリエ変換という解析手法を高速で計算するアルゴリズムです。
連続的な波形(時間領域)を、正弦波の集まりとして分解し、それぞれの周波数と振幅(大きさ)を算出します。
オシロスコープでは、この結果を横軸=周波数、縦軸=振幅としてグラフ表示します。
■FFTの活用例
FFT機能は、次のような測定や解析でよく使われます。
・電源ノイズの周波数分析
・EMI(電磁干渉)対策でのスペクトル確認
・高調波成分の可視化
・スイッチング回路の動作確認
・通信信号の周波数帯域の確認
■スペクトラムアナライザとの違い
FFT機能を使えば、オシロスコープでも簡易的なスペクトラム解析が可能です。ただし、スペクトラムアナライザと違い、分解能やダイナミックレンジは限定的であり、細かい周波数分解や低レベル成分の観測にはやや不利です。
しかしFFTは、時間軸波形と周波数軸の波形を同時に比較できるという利点があります。
■OWONオシロスコープのFFT機能
OWONのSDSシリーズやHDSシリーズなどの多くのモデルには、内蔵FFT機能が標準搭載されています。
波形取得後、ボタン1つでFFTに切り替えられ、周波数軸表示でのリアルタイム確認が可能です。また、ウィンドウ関数の選択や、スケーリングの調整、周波数カーソルでの計測も行えます。
■FFT使用時の注意点
FFT機能を使う際は、以下の点に注意が必要です。
・メモリ長と周波数分解能の関係
長いメモリ長を使うほど、より高い周波数分解能が得られます。ただし、演算時間が増えることもあります。
・ウィンドウ関数の選択
ウィンドウ関数とは、FFT演算時に信号の端部で生じる影響(リーケージ)を抑えるためのものです。代表的な関数には矩形(Rectangular)・ハニング・ブラックマンなどがあります。観測内容に応じて選ぶことで、より正確なスペクトル表示が可能になります。
・ノイズやリップル成分の見え方
FFTは信号の中に混入している高周波ノイズやリップルを発見するのに適しています。直流波形などのゆっくりした変化でも、FFTを使えば微細な高周波成分が可視化できます。
■FFTを使うためのステップ(OWON製品の例)
1. 通常波形を観測する
まずはTime Domainで波形を観測し、入力信号を確認します。
2. FFTボタンを押す/メニューからFFTを選択する
表示が周波数軸に切り替わります。
3. スケールや中心周波数を調整する
表示範囲を調整して、目的の周波数帯を拡大します。
4. ウィンドウ関数やスケーリングを最適化
必要に応じて周波数解像度やノイズ除去効果を高めます。
■まとめ:FFTは“信号の中身”を可視化するツール
FFT機能は、オシロスコープにおいて非常に便利な周波数成分の分析ツールです。
OWON製オシロスコープのようにFFTが標準搭載されているモデルでは、通常の波形観測からそのままFFT表示に切り替えられるため、ノイズの特定や周波数応答の評価に大いに役立ちます。
FFTを使いこなすことで、時間軸だけでは気づけない信号の異常や傾向を、より深く理解できるようになります。
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