タブレット型オシロスコープとは?
タブレット型オシロスコープは、従来のベンチトップ型と異なり、軽量かつコンパクトな筐体にタッチパネルを搭載した、持ち運び可能な次世代型の計測器です。
屋外や出張先での保守作業、現場でのトラブル対応、教育用途など、さまざまなシーンで活躍します。
特にMicsig社やOWON社の製品が代表的で、業界でも注目を集めています。
■持ち運びやすさを実現する軽量設計と内蔵バッテリー
最大の特徴は、バッテリー内蔵で数時間の連続使用が可能な点です。
電源の取れない現場や屋外設備の調整にも対応でき、ACアダプター不要で測定可能です。
重量も1〜2kg台と非常に軽く、リュックやツールバッグに入れて気軽に持ち運べる点が魅力です。
■直感的な操作を可能にするタッチパネルUI
ベンチトップ型のような物理ノブやボタンを廃し、スマートフォンやタブレットに近い操作性を実現しているのも特徴です。
スワイプやピンチ操作で波形のズーム・スクロールができ、測定点へのカーソル操作も指先だけで簡単に行えます。
初めて使う人でも直感的に使えるため、教育現場や非エンジニアの現場作業員にも適しています。
■高解像度ディスプレイと多彩な測定機能
MicsigのTO・STO・MHOシリーズやOWONのTO1000などは、**高解像度の大型液晶(8〜10インチ)**を搭載しています。
小さな筐体でありながら、マルチトレース表示・波形記録・FFT解析・自動測定など、ベンチトップ型と同等の機能を持ち合わせています。
タッチパネルならではの操作性も相まって、狭い場所でも波形確認がしやすい点が利点です。
■無線通信とUSBメモリによるデータ管理
多くのモデルでは、USB Type-C/Type-AやWi-Fi/Bluetooth機能を搭載しており、
● 波形データのUSB保存
● スマホやPCへの転送
● ソフトウェアアップデート
が簡単に行えます。
また、Micsigでは専用アプリによるスマホ・タブレットからの波形確認や操作も可能です。
■プロービングの柔軟性
タブレット型といえども、標準的なBNCコネクタを備えており、各種パッシブ/アクティブ/差動プローブの接続に対応しています。
小型筐体のためプロービングはやや工夫が必要ですが、オプションのストラップやスタンドを使えば、両手を使ってプローブ操作も容易になります。
また、**小電力機器や車載信号、通信バス(I2C/SPI/CAN)**の確認にも十分な帯域・サンプリング性能を備えています。
■現場作業や保守業務でのメリット
電源が取れない設備点検、制御盤やサーバールームの信号観測、フィールドでのノイズ調査など、
持ち運びが簡単で即座に測定できるタブレットオシロスコープは非常に有用です。
また、製造ラインでの品質検査や、交通インフラなど屋外機器の信号確認にも導入が進んでいます。
■導入の注意点
小型・軽量である反面、冷却ファンがない/連続測定時の発熱対策が必要な場合があります。
また、タッチパネル操作に慣れるまでは細かい設定変更に戸惑うこともあるため、ユーザーインターフェースの好みや現場用途を事前に確認することが重要です。
さらに、帯域や分解能など基本スペックはベンチトップに比べてやや制限される場合があるため、用途に応じた選定が必要です。
■まとめ:どこでも“すぐに”測れる計測器
タブレット型オシロスコープは、現場対応力と操作性、携帯性のバランスが取れた新世代のツールです。
軽量・バッテリー駆動・タッチパネルという特長を活かし、設備保守、現場トラブル対応、教育用途など幅広い場面で活用されています。
OWONやMicsigの製品ラインナップでは、コストパフォーマンスにも優れたモデルが多く、
初めてのフィールドオシロ導入にも最適です。
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