■高電圧プローブとは?
高電圧プローブとは、オシロスコープ本体の許容入力電圧を超える信号を、安全かつ正確に測定するためのアクセサリです。
一般的なオシロスコープの入力レンジは±20V〜±300V程度ですが、高電圧プローブを使えば、数百ボルト〜数千ボルトまでの電圧を分圧し、信号の波形を安全に観測できます。
電力回路、インバータ、モーター駆動回路、EV・産業機器など、高電圧が扱われる現場では不可欠なツールです。
■使用前に確認すべきポイント
高電圧プローブを使用する前に、以下の点を必ず確認しましょう。
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最大測定電圧:プローブの仕様に記載されている「CAT II 1000V」「CAT III 600V」などの安全カテゴリと定格電圧を確認
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分圧比:多くの高電圧プローブは100:1や1000:1の分圧比となっており、オシロスコープ側の設定を合わせる必要があります
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入力インピーダンス:接続先回路への影響を抑えるため、十分に高いインピーダンスかを確認
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接地方法:誤った接地は感電・回路損傷のリスクを伴うため、正しいグラウンドポイントの確認が必須です
■安全な測定手順
高電圧プローブでの測定時は、以下の手順を守ることで安全性が確保されます。
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オシロスコープのプローブ設定を確認
測定前にオシロスコープのプローブ設定で「100:1」や「1000:1」などの分圧比を選択します。
これにより、実際の電圧値が正確に表示されます。 -
プローブ本体とケーブルの絶縁状態を確認
断線や被覆の破れがないか、外観チェックを必ず行うことが大切です。 -
適切なグラウンド接続
グラウンドは回路の低電位点に接続し、誤ってライン側(高電位側)に接続しないよう注意します。
プローブのグラウンドクリップを短くし、ノイズや共振を防ぐのも有効です。 -
被測定回路の電源OFF状態で接続
プロービングは、必ず回路の電源を切った状態で行います。
測定ポイントに接続後、回路の電源を投入して観測を開始します。 -
必要に応じて絶縁型プローブを使う
フローティング測定(接地電位が浮いている)や、両端間電圧の測定には、光アイソレーション型差動プローブなどの使用を検討します。
■感電・機器破損を防ぐために
高電圧測定における最大のリスクは、感電・火災・計測器の損傷です。
以下の点に特に注意が必要です。
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プローブのカテゴリに合わない用途で使用しない(例:CAT II用プローブをCAT III配電盤で使用しない)
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**被測定信号がスパイク性の高い場合(過渡サージ)**には、耐圧に余裕を持ったプローブを選定
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周囲の絶縁環境(テーブルが金属製か、湿度が高いかなど)にも配慮が必要です
■代表的な高電圧プローブの例
OWONや他の計測器ブランドでは、下記のような高電圧プローブが販売されています。
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DP10007(100:1、最大DC700V)
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DP10013(1000:1、最大DC13kV)
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DP1001(高周波対応、高電圧差動プローブ)
用途に応じて、周波数帯域・差動/シングルエンド・最大測定電圧・絶縁方式などを考慮して選びましょう。
■まとめ:高電圧測定は「知識+適切なプローブ+正しい操作」で安全に
高電圧プローブは、正しく選び、正しく使えば非常に安全で便利なツールです。
しかし、使い方を誤ると重大な事故につながるため、測定対象・プローブ仕様・操作手順をしっかり理解してから使用することが大前提です。
教育現場では安全指導の一環として、高電圧測定の前に実習やデモンストレーションを行うことも推奨されます。
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