電源リップルの見方
電源リップルとは、スイッチング電源やリニア電源の出力に重畳する高周波成分や交流成分のことを指します。理想的な直流電圧とは異なり、実際の電源出力にはノイズや周期的な変動が存在しており、この成分を「リップルノイズ」として可視化・測定することで、電源の品質や負荷の安定性を評価できます。
リップルを見る際は、高感度・高分解能のオシロスコープを用いるのが基本です。たとえば、500μV/div~1mV/div程度の垂直スケールが選べるモデルや、12ビットADCを搭載したモデルであれば、微小な電圧変動をより鮮明に観測することができます。
測定手順としては、まず電源の+とGND間に1:1プローブまたは高精度の差動プローブを接続します。プローブ先端にグランドリードを使わず、できるだけ短いループ(プロービングループ)で接続することが、ノイズ混入を防ぐコツです。
次に、ACカップリングモードに切り替えると、直流成分を除去してリップル成分だけを抽出して表示できます。また、**帯域制限(20MHzなど)**をオンにすることで、高周波ノイズの影響を軽減し、リップルの基本成分にフォーカスすることができます。
波形の観察では、周期性・振幅・波形の鋭さなどをチェックします。スイッチング周波数に一致する鋭いスパイクや、100kHz〜1MHz帯の正弦波状の成分が見える場合、スイッチング素子やフィルタ回路に原因がある可能性があります。FFT機能を活用すれば、リップル成分の周波数を特定することができ、設計上のノイズ源の特定にも有効です。
実際の測定では、リップル電圧(Vp-pやRMS)を自動測定機能で確認すると便利です。多くのオシロスコープには「Vpp」や「Vrms」測定機能があり、時間領域と数値の両方で評価できます。
なお、リップルが大きすぎる場合は、電解コンデンサの劣化やスイッチング制御の不安定が原因である可能性もあるため、故障診断や定期点検の目安にもなります。
このように、電源リップルの測定は回路品質を確認するうえで非常に重要です。高価な機材がなくても、設定や接続を工夫することで、ローエンドのオシロスコープでも十分に有用な情報を得ることができます。
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