オシロスコープで電流は測れる?
オシロスコープは本来、電圧波形を観測するための測定器です。しかし、専用の電流プローブや外部回路を組み合わせることで、電流波形の観測も可能です。特にスイッチング電源、モータードライバ、インバータ、IoT回路などにおいて、電流の時間的変化を捉えることは重要であり、オシロスコープはそれを視覚的に解析する手段として非常に有効です。
■電流測定の基本原理
電流を直接測るには、一般的に「電流を電圧に変換」する必要があります。オシロスコープは電圧入力機器であるため、電流→電圧変換を行ってから観測する、という考え方になります。以下のような方法があります。
■方法1:シャント抵抗を使った電流測定
最もシンプルな方法は、シャント抵抗(低抵抗)を直列挿入して、その両端の電圧降下を測定する方式です。オームの法則(V = I × R)を利用して、電圧から電流を計算します。
例えば、1Ωの抵抗に0.5Vの電圧がかかっていれば、電流は0.5Aとわかります。
ただし、以下の注意点があります。
・抵抗値が大きいと回路に影響を与える
・微小電圧の測定になるため、高精度のプロービングとノイズ対策が必要
・両端電圧を測るためには差動プローブが有効
■方法2:電流プローブを使う
もっとスマートで安全な方法が、**電流プローブ(クランプ式またはセンサ式)**を使うことです。代表的なタイプは以下の通りです。
・クランプ型電流プローブ
導線に挟むだけで非接触で測定できる。主にACやパルス電流向け。
・ホール効果式電流プローブ
DC/AC両方の測定に対応。比較的精度が高く、安全。
・高帯域電流プローブ(CT方式)
高周波電流(数MHz〜数百MHz)の測定に対応。スイッチング波形などに最適。
・シャント内蔵プローブ(差動型)
低レベルの電流検出に特化し、μA〜mAレベルの測定も可能。
OWONやMicsig、SIGLENTなどでは、電流プローブのオプションが豊富に用意されています。目的に合ったものを選ぶことが、正確な電流測定の第一歩です。
■測定時の設定と注意点
オシロスコープで電流波形を観測するには、以下のポイントに注意が必要です。
・チャンネルのスケール調整
電圧プローブを使う場合、電流値を換算する必要があります。プローブ倍率や測定範囲を確認し、オシロスコープの垂直スケールを適切に設定します。
・プローブ倍率の設定
電流プローブには「50mV/A」「1mV/mA」などの出力係数があります。オシロスコープ側にこれを反映させておくことで、直接アンペア単位での測定も可能です。
・グラウンドループに注意
特にシャント抵抗方式では、測定点のGNDとオシロスコープのGNDが異なると、破損のリスクがあるため、絶縁型プローブやバッファ回路を使うと安全です。
■波形解析における電流の役割
電流波形を測定することで、以下のような現象の可視化が可能になります。
・突入電流の確認(電源投入時の一時的な大電流)
・リップルやノイズの観測(電源回路など)
・過電流や短絡状態の確認
・PWM制御やモーター回転数と電流の関係の解析
これらは、電圧波形だけでは見えない重要な情報を与えてくれるため、オシロスコープによる電流測定の価値は非常に高いといえます。
■まとめ
オシロスコープは電流測定にも応用可能であり、シャント抵抗や専用の電流プローブを使うことで、直感的かつ高精度に電流波形を観測できます。電子回路やパワーエレクトロニクスの診断・評価・開発において、電圧と電流の同時観測は不可欠な手段です。今後の測定スキル向上のためにも、プローブの特性や安全な接続方法を理解し、正しい測定環境を整えましょう。
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