測定シーン別オシロスコープ活用術 第7回「FFTを使ったノイズ源の分析」
電子回路で問題となるノイズの多くは、時間軸では見えにくく、周波数ドメインでの観察が効果的です。オシロスコープのFFT機能を活用することで、どの周波数にどの程度のノイズが含まれているかを視覚的に分析できます。
FFT(高速フーリエ変換)とは
■ 時間軸上の波形データを周波数成分に変換する数学的処理
■ オシロスコープに搭載されたFFT機能を使えば、簡単にスペクトル表示が可能
■ 電源ノイズ、通信障害、スイッチングノイズなどの可視化に有効
FFT測定の基本手順
■ 観測対象の信号をオシロスコープで通常通り表示する
■ FFTモードをオンにする(多くの機種ではワンタッチで切替可能)
■ 表示スケールを調整し、関心のある周波数帯域が見えるようにする
■ 垂直軸はdBVやVrms表示が一般的で、ノイズレベルの確認がしやすい
ノイズ源の典型的な特徴と例
■ 電源ライン:50/60Hzやその高調波(100Hz, 120Hz など)が強調される
■ スイッチング電源:数kHz〜数MHzの鋭いピークが現れる
■ 無線機器の干渉:特定の帯域にだけピークが立つ(例:Wi-Fi帯域)
■ クロック信号の影響:周期的な高調波が連続して並ぶスペクトル
ノイズ対策への応用
■ フィルタ設計前に、どの周波数を落とすべきか明確にできる
■ シールドやグラウンド設計の見直し前後での比較が可能
■ 改善後のスペクトルでノイズレベルが低減したか定量的に確認できる
■ 他の信号との干渉がないか、チャネルを変えて同時観測も有効
測定時の注意点
■ 時間軸での設定(タイムベースやレコード長)がFFT結果に大きく影響する
■ ノイズが微弱な場合は、平均化(Average)や平滑化(Smoothing)処理を活用
■ 周囲のノイズ(照明やPC)によって誤検出することもあるため、環境を整える
まとめ
FFT解析は、ノイズの原因を探るための強力な手段です。従来の時間軸だけでは見えなかった問題を明確化し、回路設計や改良に役立てることができます。次回は「複数チャネルの同時測定と相関分析」を紹介します。
測定シーン別オシロスコープ活用術(全8回)
対象読者:オシロを使ったことがある中級者向け
■ 第1回:電源回路の基本測定(リップル/過渡応答)
■ 第2回:センサー出力の確認(温度/加速度)
■ 第3回:PWM信号のデューティ比確認
■ 第4回:アナログ vs デジタル信号の測定方法の違い
■ 第5回:マイコンI/Oの応答チェック
■ 第6回:オーディオ波形の確認とひずみの可視化
■ 第7回:FFTを使ったノイズ源の分析
■ 第8回:複数チャネルの同時測定と相関分析
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