オシロスコープの基本操作 第4回「波形の保存とデータ活用」
オシロスコープは観測だけでなく、波形を記録し、後から再利用・解析できる点が大きな利点です。特に、開発や不具合調査の現場では、一度取得した波形を証拠として保存したり、他のツールで分析したりする機会が多くあります。今回は、波形の保存方法と保存データの活用について解説します。
保存できる波形データの種類
■ 画像ファイル(.bmp、.pngなど):画面に表示された波形をそのまま画像として保存できます
■ 波形データ(.csvなど):数値形式で記録されたデータを、Excelや解析ソフトで読み込めます
■ 設定ファイル(.stpなど):オシロスコープ本体の設定状態を保存し、再現できます
■ 動画形式や連続記録(機種によっては対応):一連の波形変化を記録できます
保存方法の基本手順
■ USBメモリやSDカードなどの外部メディアを本体に挿入します
■ 本体メニューから「Save」または「Export」機能を選択します
■ 保存形式(画像/データなど)を選び、ファイル名と保存先を指定して保存します
■ 一部の機種ではLAN経由やリモートソフトを使ってPC側に直接保存も可能です
波形データの活用例
■ 開発記録:特定の条件下での信号波形を保存し、設計記録やレポートに利用
■ 異常解析:発生した問題の瞬間波形を記録し、再発防止や検証に使用
■ 教育用途:特定波形を教材として使用し、説明やシミュレーションに役立てる
■ 比較分析:複数の波形データを取り込んで、条件による違いを定量的に比較する
PCソフトと連携する利点
■ 専用ソフトを使用することで、波形のオーバーレイ表示や高機能な解析が可能になります
■ CSV形式のデータはExcelなどでグラフ化して、プレゼン資料にも活用できます
■ SCPIコマンドでリモート操作しながら、データを自動的に保存・整理する仕組みも構築可能です
注意点とベストプラクティス
■ 保存前に、対象の波形が安定していること、トリガー設定が適切であることを確認します
■ ファイル名や保存日付をわかりやすく記録しておくと、後から探しやすくなります
■ USBメモリの取り扱いには注意し、確実に保存が完了してから取り外します
まとめ
波形の保存とデータ活用は、開発・品質管理・教育の各現場において非常に有効です。オシロスコープの機能を活用し、適切に保存・管理することで、測定結果の再利用や高度な解析が可能になります。次回は「オシロスコープのメンテナンスとトラブル対策」について解説します。
オシロスコープの基本操作 シリーズタイトル一覧
■ 第1回「接続と初期設定」
■ 第2回「トリガー設定の基本」
■ 第3回「スケーリングと測定機能」
■ 第4回「波形の保存とデータ活用」
■ 第5回「オシロスコープのメンテナンスとトラブル対策」
■ 第6回「プローブの種類と選び方」
■ 第7回「プローブの正しい使い方と接続方法」
■ 第8回「オシロスコープで測定できる代表的な波形と活用例」
■ 第9回「よくある測定ミスとその対策」
■ 第10回「オシロスコープの活用事例と応用テクニック」
■ 第11回「オシロスコープ購入時のチェックポイントとおすすめ仕様」
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